イブラヒモビッチのスーパーゴールを見て思ったこと
- 2012.11.18
後から振り返るとその選手を語るときに必ずついて回る形容詞は多い。物理学者の研究対象にもなったロベルト・カルロス伝説の左足アウトサイドフリーキックやCL決勝戦で見せたジダンの左足ボレー等々。時代を代表する選手たちを見てきた人ならば、必ずその選手たちの度肝を抜くプレイの一つ一つを鮮明に覚えているかと思うが、つい先日、2012年11月14日、スウェーデン対イングランドの親善試合で、神がかり的ともいえる素晴らしいオーバーヘッドキックが生まれた。
スウェーデン、イングランド共に代表選手に精通しているわけでもないので外しているかもしれないが、イングランドのメンバーを見る限りベストではないはず。知らない名前がいくつかあるのでまさに国際親善試合なのかもしれないが、それを割り引いたとしてもこのスーパーゴールの価値が下がるものではないのだ。
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グラウンド全体を俯瞰する、まさに一番眺めの良い場所からテレビを通して対戦を見ていても予測のつかないプレイが往々にして生まれる。個人的にメッシのプレイがその代表的なものだと思っているが、その場、その瞬間の刹那的なひとときにその選手でしか思い描くことが出来なかったシュートは個人の卓越した技能そのものだ。イブラヒモビッチのスーパーゴールが生まれたとの前知識だけでYouTubeを見ていたのだが、まさかあの場所からオーバーヘッドでシュートを放つとは夢にも思わなかった。
それにしてもゴールに届くまでの放物線の綺麗なこと、この上ないと思う。己の感覚だけを信じて、過去の経験に基づく微妙なさじ加減を凝縮し右足一点に集中、イブラヒモビッチの情念が乗り移ったかのようなボールはまるで吸い込まれるという表現がぴたりと当てはまるかのようにゴールに届いていく。奇跡のゴールだと思う。人間の感覚というものの底知れぬ広がり、奥深さを改めて知らされるゴールといってもいいだろう。
ゴールを祝福するために駆け寄ったスウェーデン代表の表情がすべてを端的に物語っている。みんな、開いた口がふさがらない、かける言葉が見つからないのだ。サッカーを知っている者ならば誰しもが至福の一場面を見せてもらったと思うに違いない一夜だった。