EURO2012-フランス対ウクライナを見て
- 2012.06.16
フランス対イングランド、ウクライナ対スウェーデンだとルーニーが居ないのは分かっていても、やはりフランス対イングランドを見てしまう。なのでウクライナ対スウェーデンはハイライトで見たのだが、チャンスが訪れたときに中盤を全速力で駆け上がるシェフチェンコの走り方を見ていたら、衰えを如実に感じてしまった。一瞬足がもつれているようなとでも言おうか、全盛期のディナモキエフやACミランでの瞬時にバックを振り切る圧倒的な走力を知っているだけに、35歳という年齢からくる衰えは残念だが仕方の無いものなのだろう。
後半開始直後にイブラヒモビッチの先制弾が決まったときに、もうウクライナには跳ね返すだけの力はないだろうと思っていたのだが、ここからの反撃はまさに目を見張るぐらいに凄かった。全盛期はヘッド・左右両足とありとあらゆる形で得点を量産した稀代のゴールゲッターだけに、足は衰えてもここぞという時の試合の流れを読む能力は相も変わらず健在。2得点いずれもヘッドで決めたが、ゴール前のポジション取りからバックの目の前に飛び出すタイミングまで、往時に何度も繰り返された得点場面を思い出した人も多かったのではないか。
一瞬時計の針が10年ぐらい前に戻ったような錯覚に陥ってしまったが、それにしても力を蓄え、ここぞと言うときに全てを出し切るその嗅覚はシェフチェンコならでは。チェルシー移籍後のパフォーマンスの低下を知っているだけに、改めてホームで戦うことの利点を感じてしまった。他国であったならば果たして2得点奪うことは可能だったかどうかは疑わしいが、逆に考えればホームでの圧倒的な後押しをする声援がシェフチェンコのゴールを引き出したといえるのかもしれない。
試合会場に入ることの出来なかった人たちのために、場外で大画面映像による試合中継を行っていたが、シェフチェンコが得点を上げるたびにお祭り騒ぎ。解説者によると10万人が街中に繰り出したらしいが、バロンドールを獲得した祖国の英雄と応援を送り続ける一般市民とが一体となった勝利と言っていいだろう。
第二戦は録画で見たが、開始直後の雷雨のために試合が一時中断。後半戦は全部見ることが出来なかったが、前半からのシェフチェンコの動きは悪くなかった。後半開始の左45度付近から右に流れ、バックを振り切って放ったシュートは実に惜しかった。少しずつ右に流れながらもシュートを打つタイミングを常に狙い、瞬間一撃を放ったのだが、守る方もいつ来るか、いつ来るかと待ち構える中でのシュートだっただけに、バックとの駆け引きもさることながらその老獪さは修羅場をくぐり抜けた者だけが持ち得るもの。
結果はゴール左上をかすめて得点とはならなかったが、後半あと2~3回ぐらいはこのようなチャンスがあるだろうにと思っていたら録画が終わってしまった。第三戦はルーニーが復帰するイングランドが相手。イングランド対スウェーデンは見ていないのだが、いまのイングランドの戦いぶりから判断するとウクライナにも充分勝機はある。両チームともにスペイン・ドイツのようにチーム全体で押し上げる力はなく、まとまり感に欠けるためだ。対フランス戦前半のようにまず守備を固めて相手に得点を上げさせない、必ずは何度か単発で訪れる速攻のチェンスをシェフチェンコが決めることが出来れば、悲願のグループリーグ突破も見えてくるような気がする。