中5日休養で準備万端のドイツと中3日でしかも延長120分PK勝利のイタリアでは戦う前から勝負はついているようなもの。イタリアにはハンディ0.5得点、いや1点ぐらい上げないとドイツとは互角にはならないだろう。普通に考えれば2-0または1-0でドイツの勝ちかと思っていたら、結果はとんでもなかった。

試合巧者イタリア相手に後半30分時点で0-2で負けていたら、引き分けに持ち込むことすらほぼ不可能だ。残り15分どのようにして時間を流せばいいのかを全員が理解している。押しては引いて、引いては押して、そして決定的なチャンスを与えないようにしながらダラダラと時間だけが経過するようなプレイの仕方を熟知しているからだ。

が、今回のイタリアは今までだったら流している時間帯であっても勇猛果敢に攻め込んでいったのには驚いた。もちろん攻め込まざるを得ないドイツだから守備がおろそかになりがち。だからカウンターを狙うというのは分かるのだが、2-0で勝っていたら普通はもっと守備的な試合運びをするものだ。

ブランデッリ監督の指示を見ていると、一体どちらが負けているのか分からないほどに3点目を取りに行っているのだ。従来のイタリアとはイメージの異なる戦い方を垣間見た瞬間だが、それにしてもその監督の指示を忠実に遂行する選手達の技術の高さも素晴らしい。一瞬統率のとれた軍隊行進を見ているかのような錯覚に陥ってしまうほどとでも形容したらいいだろうか？前半開始早々なら分かるが、ほぼ全員がばててくる後半40分前後でもその指示を守りきる選手全員の意識の高さは、歴史と経験に裏打ちされたもの。守備に攻撃に作戦通りの戦い方に徹するイタリア選手に機能美を感じてしまうのだ。

前監督マルチェロ・リッピさんだったら呼んだかどうか疑わしいカッサーノとバロテッリも素晴らしかった。Goal.comの見出し『悪童爆発』には笑ってしまったが、自他共に認める世界最強の悪童コンビなのは誰しもが認めるところ。それにしても今までに三発放ったバロテッリの得点はいずれも質が高い。ほんの一瞬の隙を見つけ出しバックの背後から飛び込んでヘッドで決めた1点目、そして比類のない身体能力の高さを全世界に知らしめた2点目。イタリア快進撃の立役者はもちろんブランデッリ監督だが、この悪童コンビも実にいい味を醸し出している。しかしながら決勝戦、いきなり開始5分でレッド一発退場も決してあり得ないことではないだけに、願わくば爆発はゴール前だけにとどめて欲しいものだ。

全部の試合を見ているわけではないが、今まで見た試合の中でベストはグループリーグのスペイン対イタリアだと思っていたら、決勝もその再現となった。ビジャとプジョル不在は野球で例えるのならば4番打者と捕手欠場、あるいは4番打者とエースピッチャー欠場に匹敵するので、スペインが決勝まで勝ち進むのは難しいかもと考えていた。が、こちらも苦肉の策『0トップ』を考案したデル・ボスケ監督の采配がお見事の一言だ。時折見られるバルセロナと同質の球回しとつなぎを見ていると、今更ながらビジャ不在の影響はそこかしこに見ることが出来る。イタリアは中3日で準決勝、中2日で決勝と日程だけをみるとそうとうにしんどいはずだ。デロッシとピルロが決勝戦でも好調を維持出来れば互角の戦いになる。