iPhone5のテザリング解禁に踏み切ったソフトバンク
- 2012.09.22
au iPhone 5がテザリングに対応するとやはり使い勝手の面で幅が広がる。これ1台あれば固定電話回線によるプロバイダー経由のネット回線も不要になると考えがちだが、実はそううまくはいかないのだ。そのあたりはKDDIも見越して7GBという通信制限を課してくるし、外出時に使用するにはまずバッテリーが持たないはずなのだ。もちろんモバイルバッテリーを常用すれば、ある程度はしのげるかもしれないが、基本はあくまでも短時間、他のモバイル機器をネット接続可能にするというぐらいに考えておいた方がいいだろう。
やはり外出時に長時間PCでネット接続するのであれば、ドコモやauのモバイルルータが必須となるが、とはいえPCではなくiPadに代表されるモバイル機器接続であればiPhone 5のテザリングで充分かもしれない。その意味でau iPhone 5に期待していたら、ネットでの反響が大きかったのか、急遽ソフトバンクもテザリング解禁に踏み切るという驚きの発表を行った。
●iPhone5で注目の「テザリング」とは?(Q&A) 同社は当初「テザリングができない代わりに、LTE回線でもデータ通信量による速度制限や追加料金の徴収などを行わないようにする」としていた。しかしその後「iPhone5であっても、テザリングを利用する場合は7GBで規制する」と変更している。 |
iPhone 5発表当初にはテザリング不可としていたにも関わらず、2013年1月15日からテザリング解禁に踏み切ると方針転換した最大の理由はやはりauへの対抗心からなのだろうが、問題はソフトバンク回線がその負荷に耐えられるのだろうかということだ。900MHz帯域と呼ばれるプラチナバンドを獲得し、その基地局整備で矢のようにせっつかれる毎日だと思うが、少しずつ電波状況は改善しているらしいものの、劇的にという話は殆ど聞かない。
Q ソフトバンクはなぜ、当初iPhone5でテザリング非対応としていたのか。 A ソフトバンクの電波をめぐる状況はKDDIと大きく異なり、テザリング機能を提供する上で十分な電波を簡単に整備できない事情があるためだ。 同社は2.1GHz帯で40MHz幅の電波を保有しているが、すべて3Gで使用中だった。2.1GHz帯でLTEサービスを始めるには3G向けの電波を削りLTE向けに切り替える必要があるものの、2.1GHz帯は同社のほぼ全端末が利用する主力の周波数帯であるため慢性的に混雑しており、特に都心部ではLTEへの切り替え作業がiPhone5の発売直前までもつれ込む状況となっている。 同社は7月に「プラチナバンド」と呼ばれる900メガヘルツ(MHz)帯で10MHz幅が利用可能になったのを受け、3Gの基地局を急ピッチで建設している。孫社長によると9月14日時点でプラチナバンドの基地局を6300局新設したが、都心部では新設に手間取り、2.1GHz帯の混雑を分散させるには至っていない。 「LTEだけでテザリングするならば問題ないが、LTEが圏外のエリアでテザリングによる大量のデータが3Gに流れ込んでくると、3G回線がパンクする恐れがある」(孫社長)ことから、iPhone5発売当初からテザリング機能を提供するのは断念せざるを得なかったとする。 |
要するにただでさえ回線逼迫している3G用の2.1GHz帯域をLTE用に開放せねばならず、となると影響を受けるのは既存3G回線ユーザ。2.1GHz帯域→900MHz帯域に3G回線ユーザを分散させることが出来れば問題ないのだろうが、現状では基地局新設が進んでいないために綱渡り状況のような気がするのだ。その意味で現状はauがやや有利なのかもしれないが、顧客流出を防ぐための各種の割引サービスはさすがにソフトバンクと思わせるフットワークの軽さを感じさせる。どちらが新型iPhone 5の販売を有利に展開するのか、これも面白くなってきた。