駅照明を不燃性LEDに切り替える東京メトロ

  • 2011.10.21
By Black and Blue

一般の方々には全く縁のない話で恐縮だが、建築基準法・第66条は我々の仕事と密接に関係のある防火措置について、以下のように定めている。

【看板等の防火措置】
第66条  防火地域内にある看板、広告塔、装飾塔その他これらに類する工作物で、建築物の屋上に設けるもの又は高さ3mをこえるものは、その主要な部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。



サイン・看板・広告塔の素材が何であるのか、または構造体はどのようになっているのかまで関心を持つのはその製作業者ぐらいだが、この防火地域内の高さ3m以上の工作物には不燃材を使用しなければならないという建築基準法第66条の存在は案外見落とされがちだ。

高さ4mを超える工作物を設置するときには、事前に工作物確認申請書を提出しなければならないということは知っていても、防火地域内の3m越えの工作物について不燃材使用は知識として知らない業者も少なからず居るために、繁華街の看板・広告等を見るとこれはまずいだろうと思われるものも結構あるのだ。

それでも最近はさすがに減りつつあるが、現実問題として高さ3m越えで不燃材使用の広告塔を製作するときはコストの面から難しいときがある。

2011年03月30日に掲載した『大井町の四季劇場[夏]』


この製品はもちろん高さ方向で4mを超えているが、デザイン上の問題からどうしてもFFシートの使用が必須だった。その大きさゆえの張り替えの手間暇や表面の仕上がりの滑らかさを考慮すると代替製品はなく、高さ3m越えの広告塔用のFFシートを探し出すのに難儀したものだ。サイン・看板や広告塔を設置する場所が繁華街だとすれば、用途地域が防火地域になる可能性は高いために、3m越えの不燃材を開発するのはメーカーの責務だと思うが、現実問題としては対応が遅れがちだ。

と、そんなことを考えていたら、東京メトロが駅の照明を順次、不燃材LEDに切り替えていくという記事を読んだ。屋外対応のLEDかどうかはまだ詳細が分からないが、我々の業界でも不燃LEDが求められることがあるかもしれない。備忘録として掲載したい。

駅の照明を不燃性LEDに切り替え、東京メトロ
2011/10/19 6:30


東西線浦安駅のLED照明導入イメージ

東京メトロは、地下鉄駅構内の照明を2012年2月の銀座線田原町駅を皮切りに順次LED照明に切り替えてゆく。駅改良工事などに合わせて実施し、2015年度までに計10駅に導入する。地下鉄駅の火災対策基準に適合した不燃性LED照明器具を採用した。

田原町駅ではパナソニック電工製のLED照明器具を採用した。ランプ部分に一般的な樹脂素材の代わりに、不燃材であるガラス管を使用している。明るさは蛍光灯と同等で消費電力は29W。LED化によって、構内照明の消費電力を40%程度削減できる見込み。また、寿命は蛍光灯の約3倍に当たる4万時間で、廃棄物の削減もできる。

2012年度は、日比谷線東銀座駅、東西線浦安駅の2駅で全面導入。丸ノ内線荻窪駅、日比谷線八丁堀駅、南北線赤羽岩淵駅の3駅で一部導入する。さらに2015年度までに大手町駅などに拡大する。田原町駅以外の納入メーカーは未定だが、同様の不燃仕様とする。2012年度で計約1700本の照明を交換し、年間約25万9000kWhの電力と140tの二酸化炭素(CO2)を削減できると試算している。